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胃がん 治療体験談

ステージⅢaの印環細胞がん ~治療から4年経って~
  • 池田賢一(元気隊ピアサポーター)/2017.11
告知
「胃がんですね」
2013年5月、53歳にして生まれて初めて受けた胃の内視鏡検査でストレートに告知されました。
確かに半年ほど前から、
1.日常的にげっぷが頻発する。
2.鳩尾(みぞおち)付近が重だるい。
3.急に大量の唾液が上がってきた。
と言った自覚症状があったものの、耐えられない程の不快感でもなく半年間放置していた結果が胃がんだったとは・・・。
『胃がん?』 
私自身は『逆流性食道炎だろう』位は考えていましたが、私が胃がんになるとは。
正に晴天の霹靂。
立て続けに、主治医から少なくとも胃の下部2/3の切除が必要との説明を受けました。
「しかもこれは余り顔つきが良くないがんだね」
『顔つきが悪い???』 

この時はまだ、このがんがどれ程深刻な状況なのかをそう理解はしていませんでした。
告知された時の私の心境。実は意外な程冷静だったことを今でも覚えています。
特に死に対する不安や恐怖は感じませんでしたし、手術すれば大丈夫だろう位の感覚でした。
最終的な病理診断の結果はT4aN1M0 ステージⅢaの印環細胞がん。
色々調べると、確かにこれは相当顔つきの悪い深刻な進行がんです。
最近はインターネットで大抵のことが解ります。
また、他の人の闘病記などがやたら気になります。
同じような状況の方を探します。
5年生存率は50%
普通に考えたら『これで人生終わった』ようなモノです。
そんな私でしたが、入院前に一度だけ早朝ひとりで泣きました。

手術
もう少し検査が遅かったら他の臓器へ転移して手術ができなかったのかもしれません。
幸い転移は認められず、今回はギリギリセーフで手術を受けることができました。
ただ、『今どきだから腹腔鏡手術だろう』なんて俄か知識で勝手に考えていたら、あっさり開腹手術。医師曰く、「まだ若いんだから開腹しましょう。それが確実です」と。

確かに腹部に穴を開けてモニター越しにマジックハンドのようなモノで切除するよりは、バッサリと腹を切って胃を直接目視して切除するほうが確実で安心感があります。
それに、当時はまだ腹腔鏡手術は標準的な治療では無かったようです。

6月9日、手術は滞りなく終了。当初の予定通り胃の下部2/3の切除とリンパ節を郭清。ついでに、胆石が認められていたので一緒に胆嚢も摘出したそうです。

入院
今どきの入院は本当に短期間です。
今回の私のケースでも約2週間(6月6日~6月19日)。
たった2週間ですが、消化器系の入院はなかなかツライものがありますね。
何せ、満足な食事はできませんし、術後の痛みもあります。
一応、食事は翌日の昼から開始されました。
最初は味も素っ気もない重湯と具のない超薄味のお吸い物だけ。

▲術後最初の食事

それでも、飲み込むのは少量ずつ、時間をかけて、しかも恐る恐るです。
日を追って徐々に固形物を摂取するようになります(口に入れたらよく噛むこと)。
退院直前には3分粥と薄味の味噌汁(麩入り)、鮭の切り身程度の食事になりました。
大した量でもないけれど、これが全部は食べられない。

▲退院前の食事

手術後の痛みは今でもはっきり覚えています。かなりの痛みです。
寝返りを打ったり、起き上がろうすると、不定期に体の中から何か突き上げられるような
ズーンとする痛みが襲ってきます。こうなるともう苦しくて息もできなくなります。
これには痛み止めも効果無く、ただ嵐が過ぎるのを待つように耐えるしかありませんでした。
それでも、これらの痛みは退院前には無くなりました。
また、手術の翌日から可能な限り歩くようにと指導されます。
歩くことは早期の回復に効果があるようです。

退院・自宅療養
退院後は約1ヶ月間、7月中旬まで自宅で療養していました。
その後、徐々に仕事へも復帰。2~3ヶ月もすると体力もだいぶ元に戻ったようです。
この間の体重変化ですが、入院直前は72kgでしたが、退院時には66kgに、自宅療養中は更に62kgまで減少していました(4年経った今でも64kgです)。
胃を切除すると最初は食事環境が大きく変わります。
一般的には少量の食事を回数多く摂るように指導されます。
当然ですよね。胃が小さくなったのですから。
無理に食べると途端に息苦しくなります(ダンピング)。
一方、摂取していい飲食物に特段の制限はありません。アルコールも大丈夫です。

参考までに、私の場合、1回の食事で吉野家の牛丼並盛は、食べられない量ではありませんが、ちょっと多いなと感じる量です。
尤も、4年経った今でもそうですが、基本的に食べなくてもそんなに空腹感がありません。
胃を切除すると、感覚的に空腹を感じなくなるのでしょうか。
お陰様で『食べ放題』とは無縁になりました。

退院後の治療・検査
何せ、ステージⅢまで進行した顔つきも悪い癌です。主治医からは抗がん剤の服用を勧められました。
悩ましい話です。ドクターは勧めるまでなんですね。「飲め」とは言わない。
「飲む・飲まない」はあくまで患者の意思です。
抗がん剤と聞くと副作用が気になるところ。それでも飲まないと再発や転移が不安だし。
どうしたものか・・・。結局服用することにしましたが。
私が服用した抗がん剤は1種類、薬剤名TS-1(ティーエスワン)と呼ばれている薬で、胃がん治療の抗がん剤としては一般的に処方される薬のようです。


▲抗がん剤のTS-1(ティーエスワン)

この薬は自宅で服用します。顆粒状の薬です。
私の場合、1回あたり2包(50mg)を朝食後と夕食後の1日2回、28日間連続で経口服用し、その後14日間休薬する。これを1クールとして服用を繰り返します。
主治医からは、副作用を極力伴わないように開発された薬であること。脱毛することも恐らくないであろうこと。等の説明を受けておりました。
確かにその通りで、私自身は服用中を通して特段の副作用を感じることはありませんでした。
ただ、個人差はあるようです。
時々、倦怠感位はあったでしょうか。
結果、この抗がん剤は退院後1年間服用しました。
この抗がん剤、抗がん剤としてはそう高価ではないと思います。健康保険も適用です。
それでも、4週間分で毎回3万5千円位の自己負担は必要でした。
退院後の検査は定期的にCTと血液検査。当初は1ヶ月間隔、それが2か月間隔、3か月間隔と徐々に間隔が長くなり、4年経過後の今では6か月に1度です。

がんと治療費 ~ファイナンシャルプランナーの立場から
実は、私の職業はファイナンシャルプランナーです。
ですから、このテーマ(がん治療)に適切なアドバイスやコンサルティングを行うのも私の仕事のひとつです。
そんなファイナンシャルプランナーが胃がんになりました。
願ってもない? 貴重な経験です。
今回の私の治療は全て健康保険適用の標準的な治療で行いました。

入院も2週間とのことでしたから大部屋で十分と判断。

それでも、術後1週間は痛みを考慮され病院側の指示で個室に入院していました。 さて、がんと向き合うことになると、治療せず放置するなら別ですが、ちゃんと治療するとなると程度の差はあれ、気になるのが治療費です。

『がんっていったいどれ位の治療費がかかるのだろう・・・』
仕事柄、良く聞かれます。
そこで、この治療費ですが、頭から「がんの治療には多額の治療費がかかる」と当たり前のように考えておられる方が大変多いです。
しかし、これは大きな誤解です。
もちろん、健康保険が適用にならない自由診療(例えば免疫療法など)や民間療法の費用は全額自己負担ですからそれは青天井。数百万円単位のお金が掛かることもあるでしょう。
私も、ある知り合いから勧められて自己判断で舞茸エキスを飲んでいた期間があります。
1ヶ月1本1万円位しましたね。

また、自らが希望して個室等を利用するのであればかかる差額ベッド代も自己負担です。
しかし、がん治療も私のように、全てを健康保険適用の標準的な治療で行うのであれば、高額療養費制度の適用がありますので、年収によって異なりますが自己負担の上限額は一月約10万円~20万円を見込めばそう違いはないと思います。(入院時には限度額認定証を必ず取得しておきましょう)
しかも、前述のように最近は入院期間が短くなっていますので第一次的な病院への支払いは月を跨がなければこの程度で収まると思います。
現に私の場合でも、入院・手術を行った病院への支払いは約12万円済みました。
従って、がん治療と言っても最少金額的に判断するならこの程度で済むということです。
一方、ケースによっては健康保険適用と言っても転院も含め入院が長期化することや在宅治療が必要となること、なども十分に考えられます。
長期間に亘って抗がん剤治療を行うこともあります。
もちろん、再発・転移も考えられます。
その場合の対応は大丈夫だろうか? 「薬代は?」あるいは「放射線治療は?」 
この辺りは十分検討に値するでしょう。
一方で、治療後の仕事のこと、生活のこと、今の自分にはどれだけの備えがあるか。
実はこれらを考えることのほうが直接の治療費よりももっと大切な検討課題だと思います。
十分な蓄えや別途収入があれば特に問題はないのでしょうが、そうでなければ、もしそのような事態になったら自分の場合はどうなるか、どう手当てしたらいいか、よく考えておく必要があります。
『がん難民』『金の切れ目が命の切れ目』にだけはなりたくないですから。

がんを経験して
がんを経験した人は、それが一時であろうとみんな一度は自分の人生を真正面から見つめる時間を持つように思いま
『これからどうしよう』と悩む。これはこれで大切なこと。無駄ではありません。
私達は、普段の生活の中で何もなければ『死』なんてものをそう考えるものでもありません。
『明日死ぬかも・・・』」なんてことも、時に思いはしてもそう現実味はありません。
それが正に現実のものとして目の前に突き付けられる。
そのシチュエーションの一つが『がん』です。
しかもそれが余命宣告をされるような状態だったら・・・。
『もう時間がない』
幸い、私のがんはそこまでの状況では無かったからこんな悠長な事を言っていられるのかもしれません。ましてや4年経過した今でもこうして元気で生活できているから。
しかし、私はがんになってもある意味これくらい楽天的に考える事が大切だと思います。
なっちゃったものは仕方ないし。
その時は、まず今、自分にとって大切なものは何かを考えよう。
自分にとって一番落ち着く場所は何処かを考えよう。
『もう終わりだ』と悲観的に考えるのではなく、『生きる』。この気持ちが大切だろうと。
今皆さんにぜひ考えてもらいたいと思います。

一度きりのこれからの人生を、貴方はどう生きますか?
1.人生は精一杯生きていれば「なんとかなるさ」と楽天的に考えよう。
2.これからのライフプラン・やりたいことを考えよう。
3.まずは健康に留意しよう。
4.できる限りの備えはしておこう。
5.大切な人と話をしよう。

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